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6月7日

横浜・生麦の「蛇も蚊も祭り」を見に行った。
生麦事件で有名な生麦は、川崎駅と横浜駅をつなぐ東海道に位置する。
いまはすっかり住宅地になり、海も埋め立てで遠くなってしまったが、
かつては鶴見川の河口の半農半漁の農村だったという。

近代化した町並みに、いまも300年前の風習が残っていると知り、
以前から興味を持っていたが、今回念願かなって見学に行くことが出来た。

「蛇も蚊も」とは不思議な名称だ。
その名の通り、「蛇も」は蛇のことだとわかるが、
「蚊も」の蚊の由来はわかっていない。
蛇の鳴き声から由来してるのでは?という説もあるようだけど、眉唾だ。
というか蛇って鳴くのだろうか?

「蛇も蚊も出たけい、日和の雨けい」「出たけい、出たけい」がこの祭りの掛け声なので、
追い出す対象に蚊も含まれているのだろう。
マラリヤがハマダラカによる感染症と発見されたのが1902年だが、
日本では江戸時代にすでに蚊による感染症が知られていたことになる。


厄病よけに茅や藁で大蛇を作る祭りはこれまでにいくつか見てきた。
主に多摩川の流域に多いようで、いづれも江戸時代に疫病が流行したことが起源。
蛇も蚊も祭りも同時代のものだが、他所と違うのは祭りの後に川に流すこと。
奥澤神社大蛇お練り、百村妙見尊の蛇より神事などのように、
鳥居に絡ませたり、道に這わせたままにするのは、
集落に結界を張り厄災から守る「道きり・辻きり」の名残をうかがわせるが、
疫病を川に流すのは、「人形流し」の影響だろうか。
(※もっとも、流した蛇が船のスクリューに絡まる事故があったため、
  現在では川に流さず神社で焼くそうだが。)

疫病、という視点から外れるがと、似たような民俗行事に虫送りがある。
特に、津軽地方の虫送りは藁で竜を作り、それを川に流す。
また、虫送りで送られる代表的な害虫に、稲を食べる「うんか」が居て、
尾張地方にはその名の通り「うんか送り」なる、人形を川に流す民俗行事がある。
「蛇も蚊も」が虫送りから派生したと考えると、「蚊」は「うんか」のことなのかもしれない。
そもそも蛇だって、「マムシ」が示すように虫として考えられていたフシもあるのだ。



蛇も蚊もが行われるのは現在では2箇所。
道念稲荷と原明神社だ。
かつてはこの2社の蛇(道念が雄蛇・原明神が雌蛇)が最後に絡まる2社合同の祭りだったようだが、
明治の中ごろから合同ではなくなり、それぞれ単独に雌雄の蛇を作るようになったそうだ。

道念稲荷は、身延山の奥の院の奥、大蛇伝説のある七面山で修行した道念和尚が、
この地を訪れたときに建立した神社だそうだ。
この稲荷のお告げにしたがい、疫病退散と海上安全のために、
茅で大蛇を作り川に流す祭りを始めたという。


また一説にはこういう話もある。

今から400年以上も昔、村に模範的な青年がいた。
美しい妻を娶り幸せな暮らしをしていたが、ある時妻は病をこじらせ亡くなってしまった。
妻が息を引き取るとき、男は「二度と妻は娶らず、お前のことを一生忘れない」と誓った。
だが、四十九日も過ぎぬ間に、男は村人の世話で新しい妻を迎えてしまった。

再婚から三日後、新妻は夫とともに里帰りをした。
道中、妻がのどが渇いたと道端の池の水を飲もうと顔を覗き込んだところ、
水面に映った妻の顔は醜い大蛇の顔になっていた。
驚いた男は妻を支えていた手を離してしまい、妻はドボンと池に沈んでしまった。

すると、空に暗雲が立ち込め、大風が吹き大雨になり、稲妻が光り雷鳴がとどろいた。
そして池からは大蛇が現れ、男を飲み込もうとした。

男は、先妻への誓いを破った仏罰ではないかと、必死に謝り念仏唱え逃げ帰った。
そして毎日先妻の冥福を祈り続けると、六日目にどこからともなく大蛇が現れ、
呪うように家の周りを回り続けたが、夕方になると姿を消した。

村の古老が話を聞きつけ「家の軒先にショウブとモチクサ、カヤを置けば大蛇は来ない」と教えた。
教えの通りにすると六日目、再び大蛇が現れたが残念そうに帰っていった。

このことがあって以来、生麦村では茅で大蛇をつくり、自分の家の周りを子供に担がせて回り、
仏の供養に柏餅をつくり、子供たちに振舞ったという。
これを最初に行ったの6月6日なので、毎年この日に祭りを行うようになったという。


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当日、早朝から蛇を作り始めるとのことだったが、さすがにそこにはお邪魔せず。
祭りの始まる13時ころに原明神に参った。
明神の広場では社殿の前に、すでに二体の大蛇が横たわっていた。

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長さ約27m、目は巻貝、角は琵琶の枝、耳は琵琶の葉、それぞれ赤く塗ったもの。
口の中には頭と同じ編み方で舌を作り、尻尾には赤く塗った木剣。


しばらくすると氏子たちが集まってきた。
神主による祝詞奏上のあと、大蛇の頭にお神酒を振りまき、氏子たちもお神酒を頂く。
そして、二体の大蛇を担ぎ上げた。

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神社をそれぞれ三周回り、鳥居から町に繰り出す。

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先頭に子供たちが打ち鳴らす太鼓。
神主が幣を持って辻々を祓い清めて歩き、
その後ろに「わっしょいわっしょい」「蛇も蚊も出たけい、日和の雨けい」「出たけい、出たけい」
と大蛇が付いていく。

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スピーカーで「大蛇の巡航です」と呼びかけながら練り歩くので、
お払いを望む家は玄関先でおひねりを持って待ている。

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そして、家の前で三度、大蛇を空高く放り投げる。

昔は大蛇を家の中を通過させたそうだ。
今もその名残か、時折家の中に首を突っ込ませて、家の中で三度放り投げることもあった。

家の中に入ってしまうのでは、家に入らせまいとした伝承と食い違ってしまうが…
どうやら観察していると、家の中で暴れることで大蛇の胴体の茅が乱れ落ちる。
この茅を大事に取っておくようだ。
茅を軒先に吊っておく、というのは先の伝承にも言われていることだが、
牛頭天王の蘇民将来譚とも共通する話でもある。
興味深いのは、蛇も蚊もの行われる町内に、「牛頭」さんという家が多く見られることだ。

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玄関奥深くまで首を突っ込む大蛇。


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一軒家もマンションもい関係ない。依頼主宅に届くように空高く放り投げる。

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巡行は13時から17時まで約4時間。
担ぎっぱなしはキツイので、たまに休憩。

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途中で取れてしまった角を付け直す。

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角復活。角は戦闘モードだそうだ。(この意味は後で分かるw)



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巡行再開。入り組んだ路地にもどんどん入っていく。
大蛇は曲げてはいけないので、後退するときの舵取りが大変だ。まるでトレーラーの車庫入れ。


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第一京浜。青信号を見計らって突っ切る。


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趣のある銭湯に突っ込む。


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広い場所でも、狭い場所でも。

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京急と並んだ大蛇。


再び休憩を入れ時間調整。
17時に、もう一体の大蛇と原明神前で落ち合い、境内に入っていく。

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社殿前で並んだかと思いきや、勢いをつけてぶつかり合う。

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ぶつかり絡みあい、ぶつかり絡み合い、それを三度繰り返し、地に横たわる。

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神主が祓い清め。祭りは収束に。



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最後に、氏子によって大蛇が丸められ、とぐろを巻いた状態に。
角、目、耳、尻尾の剣を取り外し、息を引き取る。
今はもう川に流すことはしないので、翌日焼かれるのを静かに待つのみだ。
氏子たちも順次、引き上げていった。



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大人たちが居なくなった後、大蛇は子供たちの遊具に。
いつの時代も変わらない光景なのだろう。

    蛇も蚊も祭り  完







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